ウッティタ・トリコナーサナ(Utthita Trikonasana)は、ヨガのポーズの中でも非常に基本的ながら奥深いポーズの一つだ。この名前はサンスクリット語に由来しており、それぞれの単語がポーズの形と状態を表現している。
ウッティタ・トリコナーサナの意味
このポーズの名前は、以下の三つの単語で構成されている。
- ウッティタ(Utthita): 「伸ばされた」「広げられた」「拡大された」という意味がある。このポーズが、単に曲げるだけでなく、体全体を上下左右に力強く広げる性質を持っていることを示している。
- トリ(Tri): 「三」を意味する。
- コーナ(Kona): 「角」「隅」を意味する。
これらを合わせると、ウッティタ・トリコナーサナは「伸ばされた三角のポーズ」という意味になる。
ポーズの特徴と意味の関連性
この名前が示すように、このポーズでは体と床が作る形が三角形になることが特徴だ。 - 三角形の安定性: 三角形は、最も安定した図形の一つだ。このポーズを深く行うことで、私たちは大地にしっかりと根を張り、精神的・肉体的な安定性(グラウンディング)を得ることを目指す。
- 全身の拡大: 「ウッティタ(伸ばされた)」が示す通り、このポーズは、足の裏から頭頂部まで、そして指先から指先まで、体全体を隅々まで広げ、拡大する感覚を伴う。これは、単に体を伸ばすだけでなく、意識や呼吸を体全体に行き渡らせることを促しているのだ。
このように、ウッティタ・トリコナーサナという名前は、このポーズが持つ安定性、拡大性、そして三角形という幾何学的な美しさを簡潔に表現している。
ウッティタ・トリコナーサナ(伸ばされた三角のポーズ)を安定して効果的に行うためのコツは、ポーズの形だけでなく、体の「土台」と「広がり」を意識することにある。
1.土台の安定(足と下半身)
このポーズの安定性は、足元から生まれる。
- 足の裏で大地を押す: 前足(つま先が前を向いている足)のかかとから親指の付け根まで、足裏全体でしっかりと床を押す意識を持とう。後ろ足(つま先が横を向いている足)の外側エッジ(小指側)もしっかりと床に押し付けることで、下半身の土台が安定する。
- ハムストリングの意識: 前足の太ももの裏側(ハムストリング)と、内側の筋肉を上向きに引き上げるように意識する。これにより、膝がロックされるのを防ぎ、エネルギーが足から股関節へ流れる感覚が得られる。
- 骨盤の動き: 上体を倒す際、腰から曲げるのではなく、股関節を蝶番のようにして倒すことを意識しよう。骨盤全体を後方の壁に引き付けるような感覚を持つと、体側が長く伸びやすくなる。
2.背骨の伸長と体側の拡大
三角形のポーズでは、体が横に倒れるだけでなく、背骨が長く伸びることが重要だ。 - 体側を長く保つ: 上体を倒すとき、胴体の左右の長さが変わらないように、体側を最大限に長く保ちながら倒す意識を持とう。体が前に倒れすぎたり、背中が丸まったりしないように注意する。
- 骨盤から頭頂部へのエネルギー: 尾骨(お尻の骨の先端)から頭頂部までを一直線に伸ばす感覚を保ち、骨の間を開けるイメージを持とう。
- 胸を開く: 上側の腕を天井に伸ばすとき、背中全体を開き、胸郭(きょうかく)を天井側に向ける。肩甲骨を背中の中心に引き寄せ、肩甲骨を下げて胸を開くことを意識すると、呼吸が深まり、首への負担も軽減される。
3.視線(ドリスティ)と呼吸 - 視線(ドリスティ): 慣れてきたら、上側の手の指先を見るように視線を向ける。これにより、ポーズの集中力が高まり、首のストレッチも深まる。ただし、首に負担を感じる場合は、正面や床を見ても構わない。
- 呼吸: ポーズをキープしている間も、呼吸を止めず、長く深い呼吸を繰り返す。息を吸うたびに体側がさらに伸び、吐くたびにポーズが安定する感覚を楽しもう。
このポーズは、力任せに体を曲げるのではなく、体の中心から隅々まで意識を行き渡らせることが最も重要なコツだ。
ウッティタ・トリコナーサナ(伸ばされた三角のポーズ)は、全身を使うため、初心者には難しく感じられることがある。しかし、いくつかの調整を加えることで、無理なく安全にポーズの恩恵を得ることができる。
初心者向け調整バージョン
このポーズの目的は、体側を長く伸ばし、胸を開き、足の土台を安定させることだ。難しさを感じる場合は、次の方法で調整しよう。
1.補助具(ブロックや椅子)を使う
最も効果的で安全な調整法は、補助具を使うことだ。
- 手の支え: 前側に倒した手が床に届かない場合、無理に床に触ろうとすると、背中が丸まったり、体が前に倒れたりして、ポーズの効果が薄れてしまう。
- ポーズの調整: 前足の外側に、ヨガブロックや分厚い本を立てて置こう。ブロックの上に手を軽く添えることで、体側を長く保ち、胸を開くことに集中できる。ブロックの高さは、床から遠いと感じるなら一番高く、慣れてきたら徐々に低くしていこう。
- 椅子を使う: ブロックがない場合は、椅子の背もたれや座面に手を添えても良い。
2.膝を軽く緩める
前足のハムストリングス(太ももの裏側)が硬い場合、膝を真っ直ぐに伸ばそうとすると、膝関節に過度な負担がかかることがある。 - ポーズの調整: 前足の膝をごくわずかに緩める(曲げる)。完全に曲げるのではなく、膝の皿がロックされない程度に緩めることで、ハムストリングスへの過度な引っ張りを防ぎ、骨盤を安定させやすくなる。
3.手を腰に添える
上側の腕を天井に伸ばすのが難しい場合、肩や首に余計な力が入ってしまうことがある。 - ポーズの調整: 天井に伸ばす代わりに、上側の手を腰に添えよう。この状態で、上側の肩を後ろに引き、胸を開くことに集中する。これにより、肩甲骨を下げて胸を開くというポーズの重要な要素を、無理なく習得できる。
4.視線を正面か床へ
首に負担を感じる場合、無理に天井を見上げなくて良い。 - ポーズの調整: 視線を正面(前足と後ろ足の間の壁など)か、床のブロックや手元に向けよう。首への負担を減らし、ポーズ全体の安定性を高めることができる。
これらの調整を加えることで、初心者でも安全にウッティタ・トリコナーサナの恩恵、すなわち体側の伸長と胸の開放を感じることができるだろう。


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